はじめに
今回製作するのは、盗難防犯対策に一役買うAppleの「AirTag」をハンドルポストに取り付けるためのアダプターと専用AirTagケースです。
その設計手順をご紹介します。
使用CADはSolidworks2015です。
過去にノリと勢いで購入して埃をかぶっていた3DCADがようやく日の目を見ましたよ。
大分型落ちしてしまいましたが、簡単なものを作るのにはこれでももったいないくらいの業務用ソフトです。
使い方を独学で勉強しているため、拘束をしっかり行っていなかったり、効率的な設計手法、一般的な設計手法とは異なる点があると思います。
※
記事を作成中に悲報が入ってきました。
2021年5月販売分のeXs1/eXs2が保安基準を満たしていないことが判り、公道使用不可となってしまいました。とても残念ですが、該当車種をご利用の方はカスタムジャパンeXs公式サイトをご確認の上、返金返品処理等を検討し、公道でのご使用をお控えください。
改修を行い再び公道使用可能となるのを心待ちにしましょう。
仕様検討
ハンドルポストを前後から挟み込む形のアダプター設計し、それにAirTagケースが取付けられるような設計にします。
組付けは下記画像のような構造になります。
アダプターは別のアイテム取り付けにも流用できるように、AirTagケースを別にしています。
AirTagケースの設計
前面側ケースの設計
AirTagがど収まって、四隅をねじ止めできるスペースを確保するとなると、40mmくらいのケースになりそうです。
なるべく小さく作りたいので、38mm角で作っていきたいと思います。
30mm角の正方形をスケッチします。
押し出しコマンドで奥行き3.3mmの直方体を作成
次にAirTagを収めるための凹みを作成します。
凹みは回転カットコマンドで作成します。
まずはAppleが公開しているPDF図面を参考にスケッチしていきます。
AirTagの図面から数字を拾ってポチポチと座標を打つのが大変な手間です…
座標に点を打ったら、それをスプライン曲線でつないでいきます。
AirTag寸法そのままだと嵌め込みがきついと思われるので、0.1mmクリアランスを取ります。
このスケッチに対して回転カットコマンドをかけます。
ケース内面から見るとこのような形状にカットされます。
ここにAirTag前面側が嵌まって、前面の銀色部分が表に見える形になります。
次は前面ケースと背面ケースに通すネジ穴部分の加工を行います。
今回は六角穴付きボルトを使用したいと思うので、ざぐり加工をしてケースの面までネジ頭を落とし込みます。
その為、3.3mm厚では落とし込みできないため、落とし込みに必要な厚みをスケッチして押し出しコマンドで追加します。
M3の六角穴付ボルトのネジ頭部分はφ5.5なので、それ以上の広さの落とし込み部分が必要になります。
今回は以下の寸法で作成します。
スケッチを押し出しコマンドで押し出し。
これでざぐりを追加しても必要寸法確保することができます。
座繰りは穴あけコマンドを使用し、穴あけします。
辺を基準に4.5㎜の位置にあけました。
※これは現物仕上がった際にRを付けた部分とざぐりの間の肉厚が薄かったので設計ミスでした…
外周部分にR=1mmでフィレットをかけ鋭角な部分を無くし、完成です。
背面側ケースの設計
背面側も前面側同様の38mm角で作ります。
前面ケース同様、矩形で正方形を作成し、押し出しコマンドで正方形の平板状にしました。
こちらは5mm程度の板厚としました。
この板に対して、AirTagの後ろ半分部分を嵌め込むためのへこみをつけます。
AirTag外形を作図して回転カット機能をつかい、おわん型のへこみを作ります。
右の3.81㎜の縦線を基準に回転した図形でカットされます。
これを回転させると…
すこし斜め上から見るとわかりますかね。
伝わりますかね?
前面ケース部分同様、AirTag寸法ピッタリでカットすると実物ではハマらない可能性があるため、オフセットコマンドでAirTag寸法より0.05㎜クリアランスをとりました。
一発でうまくいかないと思うので、1度出力して確認して微調整することになると思います。
オフセットかけたこの形状で平板をくりぬきます。
くり抜かれるとこうなります。
前面ケースから貫通してくる六角穴付ボルトのネジ部分が貫通する穴をあけます。
M3貫通用なので、穴径はφ3.2にします。
丸穴を4つスケッチして押し出しカットします。
四隅を寸法基準とすることにより、平板の形状が変化しても、四隅からの穴位置は変わらないようになっています。
次に相手ケースの座繰り穴確保分の落とし込み形状の逃げ加工を追加します。
四隅の穴と4辺をこのようにスケッチし、2mmカットします。
仕上げとけが防止のために外面側の角に1mmフィレットをかけ角を丸めます。
ついでに内側の角も0.25mmフィレットかけました。
これで背面側ケースの完成です。
ハンドルポストの設計
今回モデリングするアダプターとAirTagケースを3D上で組み立てるときに使用する、ハンドルポストを設計します。
eXs1のハンドルポストは楕円形をしているので、計測が厄介です。
短辺長辺の寸法を測定してRはざっくりと。
3DCADで測定した寸法で楕円を描いて、押し出しコマンドで楕円を押し出し。
できました。
ただの楕円の棒です。
なんとなくeXs1の色に合わせ外観色を黒系に設定。
次はこれを挟むようなアダプターを設計していきます。
アダプターの設計
アダプターパーツその1
楕円の長辺半分を使用し、それに厚みを付けた感じでねじ止めする部分の耳を描いていきます。
実際は楕円の長辺40mm半分の20mで設計すると、仕上がり時にしっかり押さえつけられないので、若干数値を小さくする必要があると思います。
今回はレジンの実験も兼ねているのでこのままの寸法で行きます。
この図形を押し出しコマンドで、AirTagケースと同じ幅38mmまで伸ばします。
次に相手側のアダプターから挿入されるネジを通すための穴とネジを止めるための六角ナット用穴のスケッチをします。
M4ナットが収まる六角形をスケッチします。
二面幅が7mm以上必要なので、φ7.2の内接円の六角形としました。
これを端面から5mmの位置にスケッチし、直線パターンコピーコマンドでX軸間隔48mmY軸間隔28mmで2個コピーを作成します。
スケッチ終了し、押し出しカットコマンドで六角形の穴を作成します。
今回は六角ナットが収まるようにするため、穴深さは3.3mmとしました。
つぎはネジが貫通する穴の作成です。
六角ナット用の六角穴の中心と同じ位置にφ4.2の穴を、穴あけコマンドで4つ配置します。
これでひとまず完成でもよいのですが、パーツをポストに挟んだ際にパーツがたわんでしっかり押さえつけられるよう、たわみ易くなるよう、R部分の肉を抜いていくことにします。
パーツ側面に長方形をスケッチして押し出しカットします。
実際には使用する素材にもよるとは思いますが、全面埋まっているよりはたわみ易くなるはずです。
あとは鋭角部分をフィレットかけて完成です。
アダプターパーツその2
次はAirTagが固定される側のパーツの設計をします。
ハンドルポストの楕円半分のスケッチを再利用し、このようなスケッチを作成しました。
設計の基本的には邪道な書き方らしいですね。
なるべく単純な形状から足したり引いたりしていくのがセオリーらしいと何かの本で見ました。
この場合だと長方形を押し出し後、楕円を押し出しカットで設計するのがよいみたいです。
そしてこの図形を押し出しコマンドで38mm押し出し。
次は六角穴付ボルト用のざぐり穴の作成です。
パーツその1の穴位置と合うように、穴あけコマンドでざぐり穴を配置します。
板厚23mmのところに深さ22mmのざぐり穴をあけます。
かなり深いですが、この後不要部分をカットするので問題ありません。
が、これもカットしてからざぐり穴作成するべきでしたね。
六角穴付ボルトが埋まる厚みを残して押し出しカットするための長方形を2か所スケッチをします。
長方形スケッチを押し出しカット。
これでAirTagと同じ大きさの土台ができました。
この土台にAirTagをねじ止めするためのネジ穴を4か所あけます。
さすがに3DプリンタでM3のネジ山は再現できないだろうとおもいますので、今回はM3タップの下穴φ1.5をあけて、タップでM3ネジ山を切りたいと思います。
鋭角部にフィレットをかけて完成です。
アセンブリ
これですべてのパーツが完成しました。
以前製作したAirTagの3Dモデルを使って組み立てて不都合がないか確認していきます。
ツール→干渉確認で、干渉がないかチェックします。
ネジなどの構成部品が干渉と認識されることがあるので、手動で選択して除外します。
残った干渉箇所を見て、意図しない干渉がないか確認します。
AirTagとケースが干渉しているのと、ポスト部分に干渉が出ているのは問題がないので無視します。
今回は特に問題がないことが判りましたので、これで完成です。
次回は実際に3Dプリンタで出力して、実機に取り付けていきたいと思います。